2010年10月21日木曜日

Bears




ユーコン準州は、日本の1.3倍の土地に人間が3万5千人ほどしか住んでいない。この数字を見るだけでも、ここにいかに手付かずの自然が残っているか、想像がつくだろう。

人間よりも野生動物の数の方が多く、カリブーなど、人1人に対して約12頭の計算だそうだ。昨年はバッファローの数が増えすぎたためハインティングの許可が下り、今年はエルクも解禁になった。それでもきちんとコントロールはされており、ハンティングのライセンスは抽選などで、それぞれの動物に決められた人数しか許可書が下りないことになっている。そう、ここでは、人間と野生動物の微妙なバランスを保つために、色々な工夫がされているである。

ここには、最近日本のニュースで話題になっている熊も人間の数をはるかに越えた数生息している。種類はグリズリーとブラック。グリズリーは体が大きく「森の王様」と呼ばれていおり、ブラックは好奇心が強いため、人前に姿を現すこともある。彼らは基本的にはベジタリアンであり、豊富な木の実や植物の根などを食べる。時々郊外のゴミ捨て場などに現れたり、キャンプ地に姿を見せる熊もいるけれど、人間が熊に「襲われた」という事故は夏のシーズンに1-2件あるかないか位である。

なぜこれだけ熊のいる土地で事故が少ないのか。
それは、野生動物の食糧が豊富な森が広大で、食べ物などを求めて人のいる場所にわざわざ姿を現す必要がないこと。それと同時に、そこを旅する人間も、まずは彼らに「出会わない」ための準備をし、そして「出会った場合の対処法」の教育を受けていることが理由として挙げられると思う。

ここでのカヌーツアーなどに参加したことがある人たちは、ガイドが食べ物はもちろんのこと、歯磨き粉や日焼け止めのクリームなど「テントの中に持ち込んではいけないもの」について話をするのを聞いたことがあると思う。同時にガイドがテント場をきれいに(食べ物のかすを落としたり、食料を放置したりしない)利用することにも気づいたかもしれない。これには、野生動物を刺激しないこと、そして動物に人間の食べ物の味を教えないこと、などの目的がある。

そして、出会った場合にはどうするか、、、。先日、ユーコン政府が発行する「ユーコンの野生地に足を踏み入れる際の心構え」を書いたパンフレットの翻訳を担当した。地元の人間はもちろんのこと、ガイドと一緒に旅をしない旅行者もきちんとした知識を持って野生地を旅し、あらゆる危険性について準備をしておくための指南書である。昔、このパンフレットは英語とフランス語だけだったが、もう10年ほど前に「日本語でも発行してもらえないだろうか」と相談に行ったところ、政府は快諾し、早々に行動に移してくれた。今回は、その改訂版である。政府の意識の高さに感謝である。

このように、普段から熊の話題には敏感な私。日本での事故の記事を読むと気になって仕方がない。私はユーコンに住んでいる人間で、日本の事情をよく知らないので、いくつか読んだインターネットの新聞記事だけで決してその結果をジャッジできない/してはいけないことは理解している。ただ、時々記事を読んで唸ることもあるし、このような事故が起こる前に人間ができることはないのだろうかという気持ちにもなる。もちろん、地元の方々は既に様々な対応策を取っていらっしゃるのかもしれないし、土地の狭さ、人間と野生動物の距離の近さの事情があって、こういう事故が起こり続けてしまうのかもしれない。でも、、、。
昨年だったか、ハイキング・トレイルに熊が出没し、たくさんの方々が襲われた事故があったのを覚えている。混乱した熊は、確か近くの店に逃げ込み、最後は射殺されてしまった。いくつかの新聞を読んだところ、最初に熊が姿を見せた時に、ある人が取った行動は「持っていた杖で叩いた」だったような気がする。知らなければ自然なリアクションかもしれないし、もしかしたら最初から人間を襲うつもりで姿を現した熊だったのかもしれないけれど、もし熊がたまたまそこを通りかかり、偶然人間と出くわしたのであれば、このような行動は熊を刺激するため、最初に取る行為としてはタブーなのだ。

ここで生活する人々の多くは、「熊がいることが前提」で自然の中に足を踏み入れる。だから、前述のように「準備」をする。私も、最初にアラスカを旅した時から、野生動物に対して、彼らの「家」に入ることに対して謙虚な姿勢を持つことを学んだ。

日本も、これだけの事故が起こるのであれば、そういう考えを持ち、教育を始めたりする必要があるのかもしれない(もし、既に行われているのであれば、申し訳ない)。それとも、野生地の少ない日本の場合、人間の暮らす場所に野生動物が存在する、、、という形になってしまう場合が多いのだろうか。長い歴史を持つ日本。きっと今の私たちが学んでいるモダンな知識に加え、昔からの動物に対する知恵やしきたりなどもあると思うのだけれど、、、。ここの先住民が私に教えてくれたように。

海外に暮らす人間として、日本の事情を考える時には、これまたできるだけ謙虚に、、、と思っている。ただ、ずっと心にあったことなので、もし考えがある方とは話ができればいいなと思う。私も日本のことをもっと学びたいと思っているから。

2010年10月2日土曜日

トラベリックス

8月下旬から9月の初旬にかけて、私も現地にて撮影のお手伝いさせていただいた旅番組、「トラベリックス」のユーコン編が今週末放送されます。
10月3日(日)
夜9時
BS日テレ

秋のユーコンの魅力満載かと思います。お時間がある方は是非ご覧になって下さいね!

2010年10月1日金曜日

Talented Friends





私の周りには、「アウトドアジー」な友達が多い。長年カナダに住んだおかげで、その「輪」はユーコン以外にも広がっており、そのおかげでたまに出かける休暇で思いがけない出会いや体験ができることもある。

カナダ最初の冬に暮らしたノースウェスト準州のフォートスミスという小さな町で一緒に犬ぞりのトレーニングを受けたジェイニーとは、もう15年以来の親友。彼女はフォートスミスでの生活以後、アウトワード・バウンド、NOLSと、北米のメジャーなアウトドア・エデュケーション・スクールでカヌー、カヤック、シーカヤック、ラフト、セーリングなど「水物ならなんでも来い」のインストラクターを務め、昨年にはマッサージ師の資格も取得した面白い存在。今回の休暇では、久しぶりにバンクーバー島に暮らす彼女を訪ね、更に彼女の友人であるココのいる、小さな海沿いの町へ出かけた。

ユーコンからは既に「雪!」とのメールが入った9月下旬、飛行機で2時間南に飛んだブリティッシュ・コロンビア州ではまだまだTシャツで外を歩ける。私たちを笑顔で出迎えてくれたココも、やはりNOLSでセーリングを教えるインストラクター。セーリングの技術は、父親から学んだという。気軽に「じゃあ、海に出ようか!」と私たちを誘い、家から車で5分の港からボートに乗り、帆を揚げる。

田舎の暮らしには不便なことも多々あるけれど、自分が愛するものが何であるかはっきっりと分かっている場合、そのフィールドがこれだけ身近にあること、それが生活の一部であることは、たまらなく大切なこと。ココも、そのひとり。3年前に買った海の見える家をゲストハウスにし、そこに宿泊する人たちをセーリングに連れていったり、教えたりしていきたいという夢を持っている。

私の「アウトドアジー」な友人たちには、「夢見る夢子」が多い。夢を語り出すと話が尽きない。でも、彼ら彼女らは、夢とともにそれを実現できるであろう技術と強さもしっかり持っている。

また、いいエネルギーをもらった。