2008年9月30日火曜日

秘宝




ユーコンの懐の深さを感じるのは、こういう風景に出会った時。


ユーコンに暮らして13年目の夏。独りで3週間のクライミングの旅に出ていた友人を迎えに、片道10時間以上も車を走らせた。今まで走ったことのないハイウェイ。舗装がされておらず、また車も殆ど通らない道のため、出発前にホワイトホースの友人たちから散々注意を受け、万が一に備えてキャンプ道具、食糧などをたんまり詰め込み、旅に出た。前日の雨で更に条件の悪くなった道を、慎重に、ゆっくり運転する。


長時間のドライブに、ちょっと疲れてきた頃だったか。。。それまでポプラとスプルースの森に囲まれていた視界が急に開け、そこには、美しく紅葉したツンドラの大地が広がっていた。「うわあ、、、」。車の中、独りではしゃぎ始めた。それまでは黙々と運転していたけれど、美しい風景は不安や疲れを一蹴してしまった。走っては止まり、写真を撮り、「きれいだねえ」と独り言を言っては次々に目の前に現れる素敵な景観を楽しむ。


到着予定の午後3時を30分ほど回ったところで、ハイウェイの脇、自分のバックパックに腰掛け、キャンピング・ストーブで紅茶を作りながら私を待っていた友人を見つける。ちょっと無い場所での再会。3週間雪と風とお日様にさらされていた友人の顔をしみじみ眺めながら、迫力ある冒険談を聞きながら、来た道をまた引き返す。
友人は、一番上の写真の湖を越えたところに見える山の更に奥深くから、道なき所、木を掻き分けながら歩いて、ハイウェイに辿り着いた。「明日クライミングのポイントを出発するけど、迎えに来れる?」という衛星電話での連絡から1週間。予告通りの日時にハイクアウトしたことに感嘆してしまう。私が持ってきた生野菜を嬉しそうに食べ、ビールを美味しそうに飲んでいた。


ホワイトホース往復の走行距離、1700キロ。私にとっても、ちょっとした旅となった。遠かったけれど、ユーコンでまた、素敵な場所を発見してしまった。